てんかん情報センター

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就労と医療

障害や病気を持つ人の就労場面で、障害や病気の状態や程度に応じて職業選択にしばしば条件がついてくることは事実です。自立した社会生活を考えるとき、就労をすることが全てではありません。しかし、その可能性があるならば、就労を目指していくことは大切なことだと思います。自立した社会生活をおくる上で必要な生活を支えるお金、仲間、楽しみや生き甲斐、様々な情報等、社会参加を通して得られるものは多くあります。就労は社会参加の一つの手段であり、たとえ充分な収入を得られないとしても、それ以上に大切なものを提供してくれます。実際にどのような社会参加、就労が可能なのか、自分自身の障害や病気の状態からまず考える必要があります。

さて、就労するためにに必要な条件とは何が考えられるでしょうか。第一に職業能力、そして第二に職業を持っての生活が可能なことがあげられます。

1.職業能力

仕事をするとき、その人の技術や作業能力が問題となります。仕事をして給料を受け取るわけですから、一定の仕事をこなさなければなりません。場合によっては、そのための知識や技術の取得も必要となります。自分がやりたい仕事とできる仕事とは残念ながら必ずしも同じではありません。理解力、応用力、作業速度、体力、対人関係能力、知識、技術等職業適性について考える必要があります。身体機能障害や知的機能障害を合併している場合はそのことも考慮しなければなりません。

てんかん発作をもつ人の場合、発作が起きると作業にどのような影響を及ぼすか知っておく必要があります。場合によっては発作による危険のため避けなければならない仕事もあります。また、労働時間や通勤方法、労働環境に制限が必要な場合もあるかもしれません。いずれにしろ自分の職業能力と、仕事への発作の影響を考え、どのような仕事ならできるのか検討することになります。

2.職業生活を支えるもの

就労するためには、まず、基本的に、(1)てんかん発作を持つ人において日常生活の自己管理で必要なことには、定期的な受診や服薬、症状に対する対応を知っていることなどがあげられます(自分の病気の理解、管理する能力)。さらに、(2)職場以外における日常生活もきちんと自己管理できることが当然必要となります(日常生活を管理する能力)。さらに仕事をこなし維持するためには、(3)勤務時間を守る等職場での決まりがきちんと守れること、職場における様々な対人関係が結べること、指示に従い責任を持って自分の役割がこなせること等が要求されます(職業生活能力)。それらが整った上で、はじめて就労が可能となり、具体的な職業選択の段階となります。

(1)自分の病気や障害の状態について理解し、管理する。

てんかん発作をもつ人の場合、治療を継続することは前提条件となります。規則的な受診と服薬は大切です。しかし生活を考える上ではそれだけでは充分ではありません。自分の病気の状態~前兆があるかどうか、発作がおこりやすい時間帯があるのかどうか、発作を引き起こす誘因があるかどうか、倒れてしまうかどうか、発作後の状態はどうか等~、発作の状態について知り、発作の予防、発作時の対処方法についても知っておく必要があります。自分の発作を知ると、発作が起きた時どのような生活上の障害となるか。それらの解決方法としてどのような対応が必要か考えることが可能になります。発作により外傷等の危険性がある場合は、外傷を避ける工夫も生活の中で必要となります。生活の中で避けた方がよいことは何か、発作後どのような対応が必要となるのか等についても確認し、守らなければなりません。身体機能障害や知的機能障害等がみられる場合も同様です。自分だけでは無理なところがあれば、やはり家族等に協力してもらうことも必要になってくるでしょう。できれば、自分の病気について正確に他人に説明できるようにしておきましょう。

(2)日常生活をきちんと管理する。

自分の病気の状態について理解し、治療の必要を了解し生活上の注意点を守ることができると、家庭での生活管理が可能となります。しかし、自立した社会生活を考えるときは、さらに体調の管理や食事の管理、清潔の保持、金銭管理など必要となることが多くあります。自分の生活に責任を持ち、管理することが必要です。自分自身では困難なことがあれば家族等に協力してもらわなければなりません。どのような点で、誰に協力してもらうのかよく考え、困難な点を協力してもらいながらも、自立していけるように努力することです。

(3)職業生活を送る

上に述べたような病気や日常生活の管理ができていてこそ、就労が可能となります。職業生活をおくる上では、就業時間や職場のルールを守る、職場での対人関係を結ぶことは最低条件として必要となってきます。職場での対人関係は、仕事を続けていく上では重要な点であり、仕事への意欲にもつながります。上司や先輩の指示に従い、責任もって自分の役割をこなしていくことは常に要求されます。もちろん、病気の状態に合わせて無理のない勤務体制や職場環境を整えていくことも必要です。そのためにも、自分の病気の状態についてきちんと説明でき、理解してもらうことが必要となります。

3.職業につくこと

就労を考えるとき最も大切なことは、治療を継続するとともに、日常生活をきちんと管理することです。その上で初めて就労が可能になるのです。もしも、日常生活や職業生活に不十分な点があれば、必要な訓練を受けることも必要となります。発作の状況や職業能力がつかみにくければ、職業適性検査を受けたり、発作の状態についてよく主治医と話をする必要があります。すぐに就労を考えるのではなく、まず必要なことから確認し、身につけていくことが大切です。

一方で、病気の管理・日常生活の管理ができ、一定の職業生活能力がありながらも、実際に就労先を見つけることはしばしば困難を伴います。まだまだ、てんかん発作に対する理解が充分でなく、病気や障害を配慮しての雇用も厳しいのが現実です。発作の頻度が少なかったり、生活や仕事をする上で発作がそれほど障害とならなければ、職場に病気を知らせる必要がない場合もあります。しかし、発作が頻回にみられたり、発作による受傷の危険性があったりすると、始めから病気について話をして就職することが必要な場合もあります。病気について話をするべきかどうかはその人の状態によって異なります。自分自身でよく考え、決めていく必要があります。

就職先を探すには、ハローワーク(公共職業安定所)や障害者職業センターを活用します。病気や障害を持ちながらの就労を促進するために、様々な助成制度や支援パートナーのような援助があります。それらを有効に活用していくことも一つの方法です。

就労は社会参加の一つの形態です。仕事をすることで得られるものは様々にあります。しかし残念ながら、病気の状態によっては就職が困難な場合もあるかもしれません。その様なとき悲観的にならずに、現在の状態で可能な社会参加の方法を検討したり、訓練を行ったりすることにより、自立への一歩を踏み出しましょう。