ケトン食療法とは、食事の内容を工夫することにより、ケトン体を糖分の代わりに脳のエネルギー源として活用できる状態に人為的にすることで、治療に応用することを指します。様々な領域でケトン食療法は活用されていますが、てんかんに関してはてんかん発作が減少する効果が期待できることが分かっています。
具体的には、脂質はケトン体を作りやすく、炭水化物(糖質)はケトン体を消す方向に働き、タンパク質はその中間です。したがって、脂肪が多く炭水化物(糖質)が少ない食事を摂取することにより、ケトン体を体内で生成させることができます。
厳密な計算式(Woodyatt計算式)では、
[0.9×脂質(g)+0.46×タンパク質(g)]:[炭水化物(糖質)(g)+0.1×脂質(g)+0.58×タンパク質(g)]
をケトン比(ケトン指数)といいますが、簡易的には
[脂質(g)]:[炭水化物(糖質)(g)+タンパク質(g)]
でおおよそのケトン比の見当をつけることもできます。この比率が一定になるように毎食計算します。一般的なケトン食ではケトン比が2:1から3:1となるように献立を調整します。
ケトン食療法の効果は、発作のタイプに関わらず期待できるといわれています。ケトン食療法を実施した方のおよそ5割で、発作頻度が50%に減少することが期待されます。効果はゆっくりと出現する方もいるので、ケトン食を開始後少なくとも1か月間は様子を見て、効果があれば2年間は継続するのが一般的です。
ケトン食療法には、低血糖、嘔気・嘔吐、便秘・下痢、体重減少、活動性低下などが副作用として生じる場合があります。予期しない副作用が生じる可能性や、ケトン食を実施すべきではない病気もあるため、医師の指導の下で行われるべき治療法です。原則として入院で導入し、副作用が生じないか十分な観察を行います
ケトン体が体内で生成されているかどうかは、病院での血液検査の他に、家庭での尿検査で尿中ケトン体が2+から3+あることで確認します。
ケトン食が実際どのような食事内容なのか、イメージするのが難しい方もいらっしゃると思います。静岡てんかん・神経医療センターでは“ケトン食 かんたん・おいしいレシピ集”をホームページに提供しています。また“ケトン食普及会”のページもご覧ください。