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No.4 2003冬
       
目 次  平成15年正月によせて
    新しい抗てんかん薬について
    栄養管理室
    第11回静岡神経医療センター「てんかんセミナー」
    再来予約制についてのおしらせ
    編集後記
     
       
平成15年正月によせて
       
   21世紀になり、3年目を迎えることになりました。今年は、当院にとっては特別な年になりそうです。今年度中にはほとんどの建物の新築、改修が終ることになります。外来・入院の患者様方に大変ご迷惑をおかけすることになりました。完成するとすばらしい病院になります。

 まず、脳波診断部門では全部がペーパーレスとなり、各診察室からコンピューターで自由に見られるようになりました。この脳波システムのすばらしいところは、各医師が診察室で操作して、脳波の異常をいろんな誘導で見ることが出来ることです。内科医が聴診器を使って診察するのと同様に、記録された脳波像をいろいろの角度から検討できるようになりました。さらに、画像診断部門が完成と、CT、MRI、SPECT、MEGなどがコンピューターを利用して各診察室で見られるようになります。これは、診察室で実際に画面を患者様に見ていただきながら検査結果等を伝えることに出来るようになり、みなさまに満足していただけるようになると思います。

 カルテも電子カルテの形となっていくと思います。すべてが電子化されていく中で、私たちは出来るだけ患者様との十分な診察時間がとれるように努めていきたいと思っています。新しい建物、機械が入り、ハード面は充実していきます。それに負けずに診療の質をあげてすばらしい病院にしていきます。

 年頭にあたり、今年の抱負を述べて年賀の挨拶といたします。

 平成15年正月 国立療養所静岡神経医療センター
 院長 八木 和一

     
 
新しい抗てんかん薬について
  てんかん発作を治すために日本で現在使用されている主な薬は次のようです(年数は発売された年)。
    1868年:ブロム
1916年:フェノバルビタール(フェノバール等)
1940年:フェニトイン(アレビアチン等)
1956年:プリミドン(マイソリン)
1963年:スルチアム(オスポロット)
1964年:エトサクシマイド(ザロンチン等)
1964年:ジアゼパム(ホリゾン等)
1966年:カルバマゼピン(テグレトール等)
1975年:バルプロ酸ナトリウム(デパケン等)
1981年:クロナゼパム(リボトリール等)
1989年:ゾニサミド(エクセグラン等)
2000年:クロバザム(マイスタン)
   随分歴史のある薬が多いことに気づかれるでしょう。長い年月を経てもこれらの薬が有効でありまた安全な薬であることを証明しているともいえます。

 しかしながら、多種多様の薬が溢れている今の時代にどうして新しい薬が少ないのかと思う人もいるかもしれません。実際には、新しい抗てんかん薬はあるのです。欧米では、上にあげた薬のなかで使用量が随分減った薬があります。有効な新しい薬あるいは副作用の少ない新しい薬を使うことができるからです。例えば次のような薬です。
    ラモトリギン
トピラメート
ガバペンチン
レベチラセタム
   これらの薬は日本以外のほとんどの国ですでに発売あるいは発売予定です。ではどうして日本ではまだ使えないのでしょうか。
  【薬の臨床試験(治験)】
     新しく開発された薬がある病気に有効であるかどうか、副作用がなく安全かどうかは、発売される前に充分に吟味されなければなりません。まず動物で試され、有効・安全であれば健康成人でさらに調べます。ついで少数の患者さんで安全性・有効性・使用方法を確かめ、さらに多人数の患者さんの協力を得て確認します。これらの結果を詳細に検討して、発売の可否を決定するのです。人を対象にして行うこのような手続きを臨床試験(あるいは治験)といいます。

 これは非常に大切な手続きです。薬を発売したあとで大きな副作用があることがわかると、取り返しのつかないことにもなるからです。しかしできるだけ迅速にこの手続きを経ることも重要です。とても優れた薬がある場合に、その恩恵を受けるのが遅れてしまうからです。日本はやや迅速さに欠けるようです。先にあげた薬のなかにはすでに10年以上前に臨床試験をはじめた薬もあるのです。

 臨床試験の評価では誰にでもわかるような方法が求められます。科学的にというわけです。このため本当の薬(実薬)と本当に見せかけた薬(偽薬)を患者さんのみならず処方する医師もわからない形で治験がすすめられることがあります。患者さんには50%の確率で偽薬が処方される可能性が伝えられます。また規則的に通院して検査を受けなければなりません。この期間は数ヶ月間つづきます。このような治験を患者さんのボランティア精神だけに頼ることはできません。このため、偽薬に当たった場合でも実薬をあとで服用することのできる手段(オープン試験)や、治験に参加することで経済的損失が生じないようにするなど、配慮が施されています。また治験に参加する人の人権や安全性が最大限守られるように厳密なルールが定められています(医薬品の臨床試験の実施の基準:GCP)。
  【新しい薬の開発】
     抗てんかん薬には、発作に対する効果が偶然に発見されたもの、経験的に使用法が洗練されていったもの、理論にもとづいて化学的に合成されたものがあります。最近ではとくに、脳内物質の詳しい知見にもとづいて新薬が開発されています。また遺伝子の情報を参考にしながら、その人に合った薬を(オーダーメイドで)作っていくというようなことも今後可能になるかもしれません。

 発作を完全に止め、しかも副作用のない、その人の体質に合った新しい薬を一刻も早く期待したいものです。そのためには、医療機関、製薬会社、国の努力に加えて、患者さんの協力も不可欠です。
 
臨床研究部長 井上有史
     
       
栄養管理室
   今回は入院患者様の食生活を担っております、栄養管理室を御紹介します。スタッフは栄養管理室長を含む栄養士4名、給食係長1名、調理師11名の計16名です。

 食事というものは、生活する上で誰もが持つ、大きな楽しみの1つであると思われます。患者様に「美味しそう」「美味しかった」、と言われるような御食事を提供することを常に求められている、なかなか厳しい立場の職場だとも思っております。

 そこでこの夏、今後の改善策として病棟スタッフ協力のもと、患者様の声(御意見)のアンケートを実施させて頂きました(A病棟のみ)。その中には、率直な御意見が多くあり、暖かい御言葉を頂くことが出来ましたし、反対に厳しいご意見も頂戴しました。そこで早速、栄養管理室スタッフが話し合いを持ち、患者様のニーズに合う御食事を提供することを念頭に置き、10月よりこれから申し上げます2つのことを実施させて頂くことになりました。

 1つ目は、長年の懸案事項でありました朝食にパン食を食べられている患者様の、副食の見直しです。以前までは、患者様には大変申し訳なかったのですが、ご飯食の方と同じ内容のものを提供しておりました。理由の1つには朝食の準備(朝食提供者約350〜400食)を調理師2名で行っており、なかなかそこまで手がかけられないというのが現状でした。しかしながら患者様の御意見として、多くの方が改善を望まれていることをひしひしと感じ、まだ満足な内容とは言えませんが「サラダ+スープ」という形で、提供させて頂くことになりました。実際1ヶ月が経ち、患者様の評判も良く、A病棟(A3〜A6)では4割強の方(小児病棟に至っては5割以上の方)が、朝食にパン食を希望されております。以前に比べ4〜5割増えており、いまだに増え続けております。

 もう1つは、患者様の希望に近い御食事を御提供するということで、選択食の導入を1日増やして週に3日にしたことです。こちらの方も患者様から選択する日が1日増えて、楽しみが増えたという御言葉を頂きました。

 このように微力ではありますが、患者様の食生活の担い手として栄養管理室一同頑張っております。

 また、当院には栄養士が4名おります。現代は飽食の時代と言われており、食生活の乱れが生活習慣病(糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化など)の誘因の1つとされております。食生活を見直すことで健康を保つことが出来るのです。栄養指導ということでなくても(堅苦しいと思われるので)、栄養相談という形でいつでも声を掛けていただければと思っております。お待ちしております。  (栄養管理室 近藤 信宏)
     
     
第11回静岡神経医療センター「てんかんセミナー」
 

てんかんと社会参加
  てんかんについての理解を深め、てんかんをもつ人たちへの援助の実践に役立てる

日時:平成15年2月14日 (金) 9:30〜16:30
場所:国立療養所静岡神経医療センター 3階講堂
参加対象者: 障害者施設職員、就労支援センター・生活支援センター職員、職業安定所相談員および障害者就職センターカウンセラー等、他てんかんに関わる専門職の方々
参加定員:60名 (先着順)
参加費:無料 (ただし、資料代として1000円)
締め切り:平成15年1月31日(金)
参加の可否:申し込み受付後、葉書にて通知致します。
プログラム:・講義1.「てんかんの障害」
      ・講義2.「日常生活と障害」
      ・シンポジウム.「社会参加援助の実際」
申し込み・お問い合わせ先:〒420-8688 静岡市漆山886
      国立療養所静岡神経医療センター 
      医療相談室「てんかんセミナー」係
      Fax:054-247-9781
      Email:sodan@szec.hosp.go.jp
※電話でのお問い合わせはご遠慮下さい。

     
     
再来予約制についてのおしらせ
   平成15年1月から、当院の外来再来診療について、予約制を実施することになりま
したので、皆さま方のご理解とご協力をお願い申し上げます。
 なお、手順は次のとおりです。
  【通常の手順】
    診察時に、外来担当医が患者さまの予定と診察予定を考慮して、次の再来診察日を決め、「予約表」をお渡しします。
  【その場で、患者さまの予定が立たない場合、
又は後日、予約日を変更される場合の手順】
    下記の「予約センター」へご連絡願います。

  「予約センター」への連絡
  神経内科   054−245−5446 内線2312
  神経内科以外 054−246−1065 (直通)
  ※予約または予約変更の連絡は前日までの月曜日〜金曜日(祝祭日を除く)の午後3時〜午後5時の間にお願いします。
  ※ これは、予約日以外は診察できませんということではありません。状態が変化した時などには、予約日以前に臨時で受診されてもかまいません。
  [ご注意]
     1.担当医の急な出張などの際には、担当医が診察できないことがあります。
 2.急患などのために、診察時刻が予約時刻より遅れることがあります。
 3.休診のご案内は、「当院ホームページ」で更新しております
     
       
編集後記
  明けまして、おめでとうございます。新病院になって、2度目のお正月を迎えることが出来ました。静岡神経医療センターニュースも、昨年の春に始まり、もうすぐ1年目を迎えます。最初は全てが初めてのことで、出来上がったのを見ては反省していたのですが、最近はイラストもちょっとは上手になったかな、なんて思いながら楽しく作っています。今年もたくさんのニュースを、皆さんにお伝えできるように、頑張りたいと思います。 (編集委員 志村 雅美)