リハビリテーション

てんかんのリハビリテーションとは

てんかんのある人が社会のなかでできるだけ制限の少ない生活をして、充実した人生を送るためには薬物治療や外科治療以外にも多くのケアが必要です。そして、必要とされるケアは年齢によって異なります。たとえばお子さんであれば発達の支援が必要なことがあります。思春期の人では友人関係の悩みに対するカウンセリングが必要かもしれません。成人では自立した生活を送るための支援が必要となるでしょう。また、自分のてんかんについてもっと知りたいという人も多いでしょう。
てんかんのリハビリテーションは、記憶障害などの高次脳機能障害に対する認知リハビリテーション、麻痺などの身体機能障害に対する身体機能リハビリテーションだけでなく、発達支援、就労・生活支援、患者教育、てんかん発作へのリスク管理などさまざまなてんかんケアを提供します。
てんかんのリハビリテーションは単独の部門だけで行えるものではありません。当院ではリハビリテーション科(理学療法、作業療法、言語聴覚療法)、看護部、療育、発達支援室、医療福祉相談室、心理室、栄養科などが協力して実施しています。

当院で行っているてんかんリハビリテーション

てんかん発作のリスク管理

リハビリテーション中のてんかん発作による受傷を防ぐことはもちろんですが、てんかん発作がどのように日常生活に支障をもたらしているかを明らかにすることが重要です。てんかん発作を恐れるあまり必要以上に日常生活を制限されている人もいます。できるだけ制限の少ない生活を送るために、保護帽や膝サポーターを使用する、自宅の危険な箇所をクッションや保護材で保護するなどの工夫を行うこともあります。

患者学習プログラム

てんかんのある人が積極的に病気に取り組むことができるように、トレーナーや同じ病気のある仲間たちと一緒にグループワークを行いながらてんかんについて話し合うプログラム(MOSES)を行っています。

就労支援プログラム

仕事をしたいと思っても、自分にあった仕事をみつけるのが難しいことがあります。また、仕事をしていて職場の対人関係で悩む人も少なくありません。職業適性検査や職業カウンセリングを行ってその人にあった仕事をみつけたり、職場での対人関係の改善のための訓練や就職のための準備訓練(JST)を行ったりしています。

認知リハビリテーション

てんかんのある人にみられる記憶障害、失語、注意障害、遂行機能障害など高次脳機能障害に対して評価を行います。認知機能訓練や代償方法を学習するなどの治療を行っています。

身体機能リハビリテーション

てんかんのある人には、てんかん発作やその原因疾患、薬の副作用によってさまざまな運動機能障害がみられることがあります。これらを考慮したうえで、神経学的所見、関節可動域、筋力、巧緻・協調運動、バランスの評価を行います。関節可動域の拡大、筋力強化・維持、麻痺の回復、巧緻・協調運動訓練、運動方法の学習などの治療を行い、日常生活に必要な運動能力の改善につなげていきます。

体重コントロール

体重が重いと発作で転倒した時に受傷のリスクが高くなったり、支援者の介助の負担が大きくなったりします。また、抗てんかん薬の一部では体重が増加すると血中濃度が上がりにくいことがあります。エアロバイクなど安全に行える運動により体重コントロールを行っています。

発達支援

てんかんのあるお子さんの運動、認知、情緒の発達を評価し、それらを促すための訓練を行います。また、家族への指導や学校への情報提供を行います。自閉症スペクトラム障害、AD/HD、学習障害などの発達障害の評価と支援も行っています。